長編野球小説<がんばれ播但キャッツ>②

大学を出て2年目の田村監督であるが、

彼には野球理論、あるいは育成法というものは最初からなかった。

大阪千里の私立大学では体育会所属ではなく、

自主サークルという名のテニス部を主催していた。

つまり、野球はまったくの素人である。

実家は手広く米屋を経営しているのだが、店の経営は8歳年上の長兄がしきっており、

田村は繁忙期にたまに配達に駆り出されるだけのプー太郎である。

その米屋のにいちゃんが、なにゆえ弱小とはいえ

田舎の公立高校の野球部の監督におさまっているのかは

筆者にも謎である。

野球との関連でいうと、彼は阪神間プロ野球フアンが応援する

播但キャッツの熱狂的フアンである。

それ以外に、高校の硬式野球クラブとかれを結びつけるものは、何ひとつない。

 

栄光の播但キャッツ。

親会社は総延長がたかだか30数キロの西播地区を基盤にしているが、

阪神間に存在する唯一のセリーグ球団ということもあり、

その人気たるや全国レベルである。

昭和10年に、日本に2番目に古いプロ野球球団、

株式会社播但野球倶楽部として設立された。

 

西播なのになんで大阪やねんなぁといったところだが、筆者の都合もある。